真珠腫性中耳炎について

真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)について原因、症状、治療方法を説明します。

真珠腫性中耳炎とは

鼓膜の一部が袋状に中耳腔に陥没し、その中に垢が溜まってしまった状態を真珠腫といいます。真珠腫は、細菌にとってはとても居心地のいい住み家です。この中で細菌が繁殖してしまうと、中耳炎となり悪臭を伴った耳漏が起きるようになります。そして、真珠腫は周囲の骨を溶かしながら大きくなっていきます。耳小骨が破壊されると難聴になります。さらに真珠腫が増大すると中耳周囲の骨が破壊され、めまいや顔面神経麻痺など様々が合併症を起こす危険性があります。

真珠腫性中耳炎の原因

鼻すすりや耳管機能の悪化が原因で発症することが知られていますが、明らかな原因のわからない例も少なくありません。耳管開放症が原因で鼻すすり癖のある方は、癖を辞めるように指導したり耳管開放症の治療を行ったりする必要があります。

真珠腫性中耳炎の症状

真珠腫に細菌感染が起きると、悪臭を伴った耳漏が現れます。真珠腫による耳漏は抗生剤で治療しても簡単には止まらないことが多いです。ポリープが形成されることがあり、その場合には血混じりの耳漏が出てくることがあります。
真珠腫によって耳小骨が破壊されると聞こえが悪くなります。真珠腫で難聴になっている場合には、病気がかなり進行していると言えます。三半規管周囲の骨が破壊されると、めまい症状が現れます。真珠腫の炎症が中耳腔の壁の中を走る顔面神経に広がると顔面神経麻痺になってしまいます。稀ですが、真珠腫が頭蓋内に影響が及ぼすことがあり、その場合、髄膜炎や脳膿瘍など致死的な病気を引き起こす危険性があります。

真珠腫性中耳炎の治療(1泊2日入院手術)

耳漏があるときには、耳内を清掃したり抗生剤を投与したりして治療します。完全に治すには、手術によって真珠腫を摘出する必要があります。

真珠腫性中耳炎の治療(1泊2日入院手術)

真珠腫性中耳炎の治療(1泊2日入院手術)

多くの場合、真珠腫は中耳腔からその後方にある乳突部にまで進展しており、このため真珠腫を摘出するために、中耳腔内を操作する鼓室形成術に加え、乳突部を開放し清掃する乳突削開術を行います。

真珠腫性中耳炎に対する手術方法は、大きく分けて外耳道後壁削除型と外耳道後壁保存型の2通りがありますが、当院での基本術式は外耳道後壁保存型鼓室形成術(canal wall up tympanoplasty)です。この術式は、治癒に至るまでの期間が短いため、短期入院手術に向いており通院期間も短くてすみます。また、本来の外耳道の形態が保たれるため、良好な聴力成績が得られやすいと考えています。一方、外耳道保存型は、外耳道後壁削除型に比べ、高度な技術が要求され、真珠腫を取り残しやすいなど再発率が高いといわれていますが、当院では内視鏡を併用し、また再発防止策を十分にとることにより、良好な結果を得てきています。

麻酔は全身麻酔で行います。耳たぶの付け根を4センチ切開します。外耳道の皮膚を周囲の骨壁から剥離し、鼓膜や中耳腔内の操作を行います。乳突削開は、外耳道後方の骨を削開して乳突洞という部分を開放します。真珠腫を摘出した後、破壊された耳小骨を再建します。鼓膜が再び陥没しないように軟骨で鼓膜を補強したり、中耳腔への換気ルートを確保したりするなどの再発防止策を行います。最後に鼓膜内陥部分を修復します。

手術費用について(1泊2日入院手術)

健康保険の適用となります。

鼓室形成術(片側)

約128,000円

鼓室形成術・乳突削開術(片側)

約158,000円

Tel.092-531-0281